一時Twitter上で話題となったのでご存じの方も多いかと思われる,新宿の某ビルの中にあるトイレなどの案内板.そのビルに以前行って調べてきたので紹介.
下の写真はその案内板.さて,トイレ(化粧室)はどちらの方向にあるでしょうか?
答えは左側.このサイン,面白い事例なので講義などでもよく使うのですが,正解率は5割を切っています.特に,ある程度の時間を与えず,パッと見て判断させるような場合(案内板は見てすぐ理解できることが重要)は,ほとんどの人が間違います.
他の階も調べに行ってみたのですが,わかりにくいのはこの階だけで,他はまともでした(この階だけ3×3で,他の階は3×2だった).ちなみにこれは,ピクトグラムが描かれた正方形のボードが壁に貼り付けており,それを配置したもの.それぞれのピクトグラム自体は問題ないのだけれど,そのピクトグラムが記載されたボードが間隔に配置されてしまっているために,どちらがどっちなのかということがさっぱりわからなくなってしまっています.
人が複数のものを1つのグループとして認識する仕組みとして,プレグナンツの法則(ゲシュタルトの心理学)が良く知られています.これは,近くにあるものはグループとして認識されやすい(近接の要因),色々な種類のものがあるとき似たもの同士は1つのグループとして認識されやすい(類同の要因)などのような事に基づくもので,ポスターでどのようにテキストや画像,グラフなどを配置するか,スライドやWebページ上にどのようにオブジェクトを配置するかなど,デザインを行う上で注意するべき点です.
1枚目の写真は,「←」「↑」「→」という3つの矢印が方向を意味していることはわかるのですが,トイレ(化粧室)のピクトグラムが,どの矢印とグループ化されるのかがわかりません.これは,すべてのプレートが同じ色と形をしているため,色や形によってグループ化がされず,きれいに等間隔に配置されているため,その近接関係でも,どのようなグループになっているのかがわからないことが理由です.
例えば,下の写真のようにある程度プレート間にスペースを入れると(もっとスペースは広くした方が良いとは思いますが・・・),上段のグループ,中段のグループ,下段のグループという3つのグループとして認識されるようになるため,まだ間違う人は減ると思います.
他にも,色を付ける方法なども考えられるでしょう.ただ,このプレートは付けはがし可能なもののようですので(どの程度しっかり接着されているかは不明ですが),そもそも下の写真の例のようにレイアウトを変更した方がよいかもしれません(フォトショ編集能力が低いので粗が目立ちますがご勘弁を).
誰のせいでこうなったのかという事にも妄想が広がりますし,とてもいい教材となるBADUIでした.