楽しいBADUIの世界

1日1 BADUI(ユーザインタフェースの失敗学)

わかりにくくて別の階に連れていかれてしまうので助け合いが生じるエレベータ

      2017/12/20

さて,昨日の続きでブリスベンで出会ったエレベータ.

これまでにも紹介したことがありますが,ある程度しっかりしたホテルのエレベータには,セキュリティ面を考慮して,エレベータ内にあるリーダーに部屋のカギをタッチしないと指定の階に行けないというものが多くあります.

タッチしないと目的階に行けないというのは安全性を考慮してのものなので仕方ないのですが,このホテルの場合,引っかかってしまうポイントが5つもあるため,多くの人が別の階に連れていかれてしまい,グラウンドフロア(日本でいうところの1階)にエレベータで降りてきて降りずに(少し恥ずかしそうに)そのまま折り返して上の階にあがっていく人とか,2階にある食事のフロアや自分の部屋のあるフロアに行きたいのに,別の階に連れていかれてしまって難儀するということが多発しており,1日に3~4回はそうした人たちに遭遇していました.かくいう私も,毎日1回以上は別の階に連れていかれるありさまで,最後までなれませんでした….

エレベータ内の操作パネルのUIは下記のような感じ.

上の写真のように,エレベータ内の向かい合う壁に,2つの操作パネルが設置されているというものです.説明はありませんが,ぱっと見そこまでわかりにくいものではないですし,エレベータ内でリーダーにタッチしなければならないものでも,複数日宿泊しているここまで多くの人が間違うのは珍しいと個人的には思います.

で,その問題は下記の5点が原因として考えられます.

  • フロントでそもそもエレベータの使用方法を教えてもらえないうえ,エレベータ内にもそうした説明が存在していない
  • エレベータ内に2つの操作パネルが存在しており,一方の操作パネルの下にしかリーダーが存在しない(上の写真には存在しておらず,下の写真には存在している)
  • 操作パネルで,目的階を押せてしまい,一度その階のボタンが明るくなるため,目的階を指定できたと油断するのだが,1~2秒後に消えてしまう.
  • リーダーにタッチしてから,目的階を指定しなければならず,目的階を指定してからリーダーにタッチすると,1~2秒後に目的階に対する指定操作が消えてしまう.
  • エレベータのドアが閉じるまでの時間が短く,ドアが閉まってしまうまでに目的階を指定できていないと,中からは操作できず他の階に連れていかれてしまう(体感的に,1度上記の操作に失敗すると間に合わない).

というものでした.

私なんぞは,目的階(4階)に行きたかっただけなのに,グラウンドフロア→6階→8階→グラウンドフロア→4階と無駄な行き来をしなければならず,随分と難儀してしまいましたが,普段は見ることができないものを見れて,なんとも楽しいBADUIでした.

さておき,このBADUIのおかげで,エレベータ内での宿泊客同士のコミュニケーションがやたらと発生してましたので,もしかしたらひと同士の助け合いのためとしては面白いUI設計なのかもしれません(笑)

BADUIを集めて整理した「失敗から学ぶユーザインタフェース」が発売されました

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