楽しいBADUIの世界

1日1 BADUI(ユーザインタフェースの失敗学)

慣れ親しんだ乗車券と改札なのに使い方が…

   

先日,沖縄に行った時にモノレールの自動改札がICに対応していました.ICカードタイプの自動改札は,カードをタッチするだけで改札を通過できるのでとても便利です.まぁ,SuicaやICOCAなどに対応しているわけではなく,独自仕様なので,これから相互乗り換え可能になるのを期待してます.それはさておき,このICへの対応でちょっと困ったことが起きていました.下の写真は,そのOKICAに対応している自動改札の写真です.

OKICA専用

OKICA専用

ちょっと見慣れない感じの自動改札機です.ちなみに,OKICA専用とシールが貼ってありますが,これはSuicaやICOCAに対応していないという意味であり,乗車券も普通に使うことが出来ます.で,自動券売機で乗車券を購入した時に出てきたのが下のようなもの.

新しくなったチケット

新しくなった乗車券

見慣れた行き先と値段に加え,磁気読み取りっぽい部分と,QRコード(2次元のマトリックス型バーコード)が追加されています.

問題は,この乗車券の使い方です.このタイプの乗車券は,自動改札の読み取り口に挿入して利用することが一般的ですが,新しく設置された自動改札にはそのような挿入口はありません.で,よく見ると自動改札のある部分が青く光っており,「ICまたはバーコードでふれてください」と説明書きが有ります.

ICまたはバーコードでふれてください

ICまたはバーコードでふれてください

また,改札の手前には下図のようなP!とタッチという説明が.

P!とタッチ

P!とタッチ

一般的な乗車券なのに,挿入ではなくタッチ操作が必要であるため,どうしてもこういった説明が無いと使えません.

ちなみに,私のような技術系の職業に就いている人間であれば,ああなるほどこれはこの青色で囲まれた部分にカメラがあって,そこにあるカメラでQRコードがうつるようにかざせば良いのだなと気付くと思います.ただ,そうでない人にとってはICカードのような感覚で裏表を気にせず乗車券をタッチしてしまうことになるため,読み取られず,改札の場所で戸惑う人が続出してしまいます.

タッチ方法

このようにタッチして下さい

それが分かりにくいからと,さらに追加で「このようにタッチして下さい」と裏面を手前にしてタッチするような説明もあります.ただ,これでも使い方がわからず困っている人が居るため,駅員さんが乗車券を大きくしたものを見せながら,「ここをタッチして下さい~」と案内しつつ,悩む人に直接説明していました.

変な物を入れられて故障すると困るとか,機構をシンプルにしたいなど気持ちはわかるのですが,すでに世の中に普及しているものの使い方を人に教え使ってもらうことは難しいものです.また,人はそのシステムがどのような仕組みで成り立っているのか(読み取っているのか)などを理解しているわけではありません.こういうものを使うのであれば,従来のような乗車券ではないものにするとか(ペラペラの紙のようなものなど),従来型のものを使うにしても裏表両方にQRコードを印刷するなど,色々と工夫が欲しいUIでした.

利用者がほとんど固定であり,ある程度時間が経つと慣れてくれるような環境だと,利用者に慣れるまで待とうという考え方もできます.ただ,沖縄のモノレールの利用者の多くは観光客であり,観光客は日々そのシステムを利用するわけではなく,慣れてもらうということは期待できません.また,観光客がこのためだけにICカードを買うということも無いでしょう.つまり,毎回多くの利用者に利用方法を説明する必要が発生するわけで,折角の自動化システムなのに駅員さんが働きまくる必要があるという,なんとも困ったさんでした.

ちなみに,2015年6月中旬に訪れた時には「切符のバーコードを青い場所にタッチして下さい」という音声アナウンスが改札口近辺でずっと流れていました.視覚的な情報だけでは足りないと何とかしようと色々試行錯誤しているのは素晴らしいと思いますし,QRコードという言葉は一般に広く知られているわけではないため,バーコードという言葉に置き換えているのだと思います.ただ,QRコードを知らない人に対して,QRコードをタッチするという意図でバーコードをタッチして下さいと説明したところで,切符の上にプリントされたQRコードを見て「これがバーコードか!」と思い至ることを期待するというのは少々厳しいような気もします.QRコードと料金の印字がすぐ側にあるので,本質的ではないにせよ,料金が表示されている面(部分)をタッチして下さいと説明する方が良いようにも思います(まぁ,1日乗車券もあるので説明は工夫する必要がありそうですが).

何にせよ面白い事例です.

BADUIを集めて整理した「失敗から学ぶユーザインタフェース」が発売されました

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